コウモリの音響定位を妨害する蛾

コウモリの音響定位を妨害して身を守る蛾がみつかったらしい。
自ら音を出してコウモリの音波を妨害するとのこと。
ヒトリガのなかまで音を出すものは知られていたけれど、実際にその妨害効果が確認されたのは今回がはじめてらしい。蛾もなかなかやるじゃない。

Estimating divergence times from molecular data (2)

遅くなりましたが。。
集団分岐におけるモデル
Isolation model
祖先集団が二つの集団に分かれるとする。派生集団の間ではMigrationは起こらない。
4つのパラメータであらわせる
θA 祖先集団の多型性
θ1 派生集団1の多型性
θ2 派生集団2の多型性
T 集団の分岐年代(世代数)

Isolation with migration Model
派生集団間でMigrationを想定するモデル。
上の4つのパラメータに、Migrationを現すパラメータm1、m2が加わる。m1は集団2から1への移入度をあらわし、m2はその逆。

複数遺伝子座を使うことのメリットSingle versus Multiple loci
1.より多くのサイト→サイトごとの進化速度のばらつきを少なくできる
2.Coalescent variation 前述のようにθからその遺伝子のMRCAまでの時間を推定する際には大きなばらつきが存在する。これは集団分化時間を推定する際には大きな障害になる。このばらつきの程度を補正してよりよい分岐年代を推定するのに複数遺伝子座の情報は有用になる。(同じ集団史を持つ集団におけるGene treeの独立なサンプルとして扱うことができる)

集団サイズの変動を考慮する必要性
θAとθ1、および2は分岐時間の推定に大きな影響を与えるので集団サイズの変動も重要になる。種分化やCladegenesisに際しての集団サイズ変動の推定法には2つのクラスがある。1、Cladegenesisの想定なしにSingle lineageにそった集団サイズの変動を推定する方法。2、現在の集団サイズと過去の集団サイズを比べる方法 
1の方法はヒトの集団サイズ変動の推定に多く使われてきた。その結果最近10万年くらいの間のPopulation expansionを示している。しかしながらこの方法に基づいて導かれた集団間分岐年代は種分化に影響をうけているかもしれないし、そうでないかもしれない。(からやめておいたほうが良い。とは書いていない。政治的なにおいがする。加えてこの部分の論理は少しおかしい気がする。理解できていない。要はSingle locusでの集団分岐年代の推定がだめということか。)2の方法に基づいた研究はヒトチンプ間でよくやられている。Rate variation among lineageを考慮しても分岐年代は大きく変わらなかったが、祖先集団の多型を考慮すると数百から数千世代の開きがあった(〜4.5百万年前)。
ところが、祖先集団サイズ(祖Ne)にはunkown biasが存在する可能性もある。たとえば、祖Neが非常に小さいような場合、どれだけ正確に集団サイズを推定できるかという問題がある。この方法はlocus間のCoalescence timeのばらつきから、祖Neを導く(複数遺伝子座を用いることのメリットとしても考えられる)。したがってLocus間の”置換”速度のばらつき(これは各遺伝子ごとの置換速度が正確であればクリアされるような・・・でも集団レベルでの置換速度を正確に求める方法がないのかも)があると祖NeはOver estimateされる。この置換速度のばらつきはより小さい集団サイズで大きくなると思われるので(確率的な変動で一気に固定されてしまう率が高くなる)、祖Neが小さければ小さいほど祖Neを正確に推定することが難しくなることになる。祖先集団のNeのより正確な推定は今後の課題だろう。

Estimating population divergence time

1、Recent species and population divergences
分子データに基づく分岐年代推定に伴う問題と要因
まずよく知られているGene treeとSpecies treeの相違があげられる。(Incomplete lineage sortingによる)たとえGene treeとSpecies treeが一致しても、両者には分岐のタイミングの差が存在する。この分岐タイミングの違いは祖先集団におけるCoalescent過程に依存する。その後(現生集団)のボトルネックなどは影響しない。

したがって、この差を生み出す要因は2つある。

  1. mutationレベルの過程
  2. Populationレベルの過程

1.Mutation レベル
近縁種や集団の分岐の場合、Saturationはほとんど考えなくても良い。(Infinite site model)しかし、サイトごとのMutation rateが大きくばらつく場合、一定のサイト(あるいは領域か)では多重置換が起こっている可能性があるので注意。その疑いがある場合はFour-gamete testなどでチェックするとよい。

2.populaitonレベル
祖先集団のコアレセント過程におけるばらつき。

コアレセント過程の説明・・・云々
(exchangale models of Cannings(1974)とはなにか?)

集団の分岐から、祖先集団で,あるGeneがMost Recent Common Ancestorにたどり着くまでの時間は
4Ne/n(n-1)を平均に指数分布する(exponentially distributed)。
Gene treeからDivergenceを計るときは、このばらつき(確率的な変動)を考慮しないといけない。

したがって正確なDivergenceを得るためには過去の集団サイズの変動を知らなければならない。

今日の一言

俺は自分でも呆れるほどバカなことをたくさん言ってきた。
だがその瞬間の俺を理解することは出来ない。
自分の考えたことやいったことで自分を罰することなどできないんだ。
――映画「その男ヴァンダム」オフィシャルサイトより――

飲酒する哺乳類

結構メジャーなのかもしれませんが。。
PNASにツパイが飲酒する習慣を持っているという論文が載ってちょっと前に話題になっていたみたい。Pentailed treeshrewというやつで日本語では「ハネオツパイ」というらしい。羽オッパイじゃありません。
(Chronic intake of fermented floral nectar by wild treeshrews. PNAS July 29, 2008 vol. 105 no. 30 10426-10431)

何でも最高3.8%(平均0.6%)のアルコールを含む花の蜜が入ったつぼみを常習的に食べていることがわかったそう。この花(ヤシ)、つぼみにイーストを育てていてアルコール発酵してるらしい。
じゃあもしかして食べ過ぎてふらふらしているツパイもいるのかなと思ったが、どうやらこのヤシを食べに来ているツパイは酔っ払った様子は見られないらしい。残念。
このツパイの毛からは大量にアルコールを摂取したヒトにみられるのと同じように、高濃度のエチルグルクロニド(ethyl glucuronide:アルコールの代謝産物)が検出された。
驚くべきはどのくらいアルコールを取るとネガティブな効果といえるかをしらべた方法。平均的な体重の女性が12時間に9杯のワインを摂取。・・・おまえやろ!
研究を楽しんでいらっしゃる。

このハネオツパイは現生のツパイやその下に続く類人猿(ヒト、といわなかったのは懸命?)の祖先的な形質を保持した種類らしいので、アルコール耐性を獲得したのはこれらの種類(Euarchontoglires?)の放散のかなり早い時期だったのでは?と筆者らは主張。

このヤシに来ている他の哺乳類もいて、Plantain squirrelシンガポールで見た!結構コモンなリス)やcommon treeshrewもエチルグルを毛にためていたらしい。(けれどLong-tailed macaque(カニクイザル)の毛からは検出されなかったそうな。)
でもこの程度のアルコール、他の哺乳類たちはだめなんだろうか。
それにツパイは積極的にこのヤシを利用しているんだろうか?それによってどんなメリットがあったんだろう?

今は遠くで働いているが、ビールいっぱいで寝てしまう同期がいる。
せっかく獲得したんだったら、そのままもっておいて欲しいものだ。

ヨーロッパのネアンデルタール人は色白

知らなかったのだが一昨年にネアンデルタール人のMc1rに関する論文が出ていたみたい。
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2303165/2283244
たくさんニュースやブログがあるが間違いが多いので論文を読んでみた。
要点は
1.ネアンデルタール人のMc1rは現代人には見られないアミノ酸変異を持っている(細胞内に出る4番目のloopの部分:キツネ・ウシ・ヒツジ・マウスの毛色変化)。
2.そのほかの部分の変異は見ていない(多型を共有していたり、同じ配列をもっていたりしても、コンタミと区別できないから)
3.ネアンデルタール人のMc1rをCOS-7(アフリカミドリザル由来細胞)に入れて、cAMPの活性をはかったら、非常に低くて現代の色白赤毛の人と同程度だった。
4.この細胞でMc1r自体の発現を調べたら、トータルの発現量は変わらないが、細胞表面での発現量が減少していた。⇒cAMPまでのシグナル伝達の差ではなく、細胞表面の発現量の差でcAMPが減少。
5.2個体調べて、ヘテロかホモかわからないが、1個体は確実にこの変異を持っていることがわかったから、この頻度を信じれば最低でも1%(どういう計算かわからない0.25*0.25=0.0625?何かシュミレーションか。)はこの変異をホモにもった個体がいたことになる。
という感じ。
なぜにアフリカミドリザルの細胞を使ったんだろ。ヒト由来のほうがよいだろうに。
でもまあ、これで何か別要因による特殊な効果(エピスタシスとか)が起こっていない限り、ネアンデルタール人にも現代人と同じような体の色のバリエーションがあったことは確実そう。
ネアンデルタール人との交雑があったかどうかが気になるところ。この結果は見ている変異が少ないし、そもそもあきらめちゃってるので中立の立場をとってるが、特異なバリアントがあったことは交雑がなかったとする説を少しだけ支持することになる。さらに、この論文で言っているようにこの変異がヨーロッパで有利だったとすれば、もし交雑していたら現代人にもこの変異が取り込まれる確率は高くなるだろうから、色白赤毛の現代人に同じ変異が見つからないのは交雑がかなり少なかったか全くなかったかということになる。
交雑派の僕は少し残念。